退職するいいタイミングとは?

退職代行コラム

Q. 退職代行を利用して退職する時期として、いいタイミングはありますか。

A. あります。労働者からの一方的な退職に拘らず、使用者に対する損害賠償責任を負うリスクを回避できる時期はいつかという観点からご説明いたします。

① 円満退職

 紛争予防の観点から、円満に退職するのが好ましく、退職代行を利用する場合でも、就業規則若しくは雇用契約書があれば、所定の退職手続に則り退職の申入れをすることをお勧めいたします。この場合、弁護士が使用者との間で退職について協議して、残っている年次有給休暇を全部消化したり、合意により一部を買い取ってもらったりする一方で、業務、事務の引継や離職手続を滞りなく進めて、円満に退職することができます。

② 退職理由に正当事由がある場合

 会社にはもう行きたくない、業務や事務引継等はしたくない、円満な退職でなくてもよい、とにかくすぐに退職したいという場合は、雇用契約に期間の定めがあるかどうかを問わず、専ら退職理由に「法的に正当な事由」(「やむを得ない事由」)があれば、直ちに退職できます(民法628条、なお同法は雇用契約に期間の定めがある場合だけでなく、定めがない場合にも適用されるものと解されています(大判T11.5.29))。この場合、一方的な退職であっても使用者から損害賠償請求を受けるリスクはありません。「法的に正当な事由」は、①雇用契約が継続することが不当、不公正と認められる場合であり、例えば、天災・地変による就労不能、使用者の賃金不払、労働者が負傷、疾病により就労不能になった場合、②労働者が雇用契約に当たり、知らされていた賃金の額であるとか、労働時間等、重要な労働条件が事実と異なっていた場合(労基法15条2項)にも肯定されます。ですから、上記正当事由があれば、使用者から損害賠償請求を受けるリスクなく、いつでも雇用契約の即時解除ができます。また、例えば、年次有給休暇を全て消化した後とか、賞与の支給日を待つとか、退職金規定に照らして勤務期間を考慮して時期を決定するのもよいでしょう。

③ 退職理由に「法的に正当な事由」がない場合

 退職理由に「法的に正当な事由」がない場合には、雇用契約に期間の定めがあるか否かによって、使用者に対する損害賠償責任を負わなくて済む退職時期がありますので注意が必要です。まず、雇用契約に期間の定めがない場合は、「法的に正当な事由」がなくてもいつでも退職の申入れをすることができますが、雇用契約が終了するのは申入れから2週間経過後とされています(民法627条1項)。次に、期間の定めがある場合は、「法的に正当な事由」がなければ契約期間内は退職できないのが原則です。ただ、契約期間の初日から1年が経過していれば、理由の有無を問わず直ちに退職の申入れができるものとされています(労基法付則137条)。ただし、この場合でも、退職までには申入日から2週間待たなければならないのは、期間の定めがない場合と同様とされています。以上の法律の規定に従って退職時期を決めれば、損害賠償のリスクはありません。

 なお、労働者にとって有利な退職方法は、雇用契約に期間の定めがあるかどうかによって異なります。

退職代行についてご不明な点や詳しくお話を聞かれたい方は、お気軽に大明法律事務所までお問い合わせください。

ピックアップ記事

関連記事一覧