正当理由により直ちに退職したい場合

退職代行コラム

Q.
私は、雇用契約に期間の定めがない正社員です。
会社の上司からパワーハラスメントを受けて、精神的に落ち込んでメンタルクリニックを受診したところ、うつ病を発症しており、当面、自宅療養が必要と診断されました
今の状態では到底、会社に行くことができず、すぐにでも退職したいのです。法律上、退職の申入れをしてから2週間待たなければならないと聞いています。どうすればいいでしょうか?

A.
即時退職できるものと考えられます。

【解説】
ご指摘のとおり、法律上、雇用契約に期間の定めがない場合は、労働者はいつでも退職の申入れをすることができますが、2週間経過しないと雇用契約は終了しません(民法627条1項)。
ところで、法律は、雇用契約に期間の定めがある場合、やむを得ない事由があるときは直ちに契約を解除して退職できるとしています(民法628条)。

この規定は、前提として本件のように雇用契約に期間の定めのない場合にも適用があるものと解されていますので(大判T11.5.29)、ご相談の退職理由がやむを得ない事由といえるかが問題となります。

ここで、やむを得ない事由とは、雇用契約が継続することが社会通念上、不当、不公正と認められる場合であり、例えば、天災・地変による就労不能、使用者の賃金不払、労働者が負傷、疾病により就労不能になった場合などが考えられます。

本件では、上司のパワハラにより労働者が疾病(うつ病)により就労不能になったということですから、やむを得ない事由に当たり即時退職ができるものと考えられます。

なお、仮に、本件の退職理由が、やむを得ない事由に該当しなかったとしても、使用者としては、現実問題として、退職の意思を表明している労働者をして強制的に就労させることはできません(労基法5条)。
したがって、事実上、退職を認めざるを得ないこととなります。

ただし、このやむを得ない事由がないにかかわらず、労働者が即時退職を主張してきたときは、使用者としては、労働者の重大な契約違反として労働者を解雇できる場合があるものと考えられます。

これに加えて、やむを得ない事由がないときは、労働者は、やむを得ない事由が労働者の過失により発生したときと同様に(民法628条後段)、使用者に対して損害賠償責任を負うことがあります(民法415条1項)。
ただし、仮に損害賠償責任を負う場合でも、通常は、労働者が退職したことにより使用者が被る損害が高額となることはほとんどないものと思われます。
現実にも使用者が労働者の退職による損害賠償を請求した裁判例はほとんど見当たりません。

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