従業員兼務取締役は退職代行利用可能か
Q. 会社の従業員兼務取締役をしています。
従業員だけでなく取締役も辞めたいのですが、
退職代行を利用できますか。
A. 利用できます。
【解説】
① 従業員兼務取締役
いわゆる従業員兼務取締役とは、
例えば肩書として「営業本部長取締役」などのように会社内において、
労働者たる地位と取締役たる地位を併せ持つ人のことをいいます。
したがって、会社との関係は、
『労働者たる地位では雇用契約。』『取締役たる地位では、委任契約。』
の二つの契約関係を有していることになります。
辞める場合は、二つの地位のうちいずれか一つの地位だけなのか、
両方の地位なのかという問題が生じます。
このことから、雇用契約及び委任契約の解消という2つの局面が
生じ得ます。
② 取締役たる地位の解消
従業員たる地位については、
雇用契約の解消として通常の退職と同様ですので、
ここでは取締役たる地位の解消についてご説明いたします。
ところで、取締役には会社の定款でその任期が定められていますが、
その地位は民法上の委任契約に基づくものとされています
(会社法330条、民法643条)。
委任契約は、
各当事者がいつでもその解除をすることができます(民法651条1項)
ので、取締役は任期途中であっても、いつでも委任契約の解除をして
自由に辞任することができます。
しかし、辞任の意思表示があったとしても、その取締役の辞任によって、法定の取締役の定数に欠員が生じる場合には、
後任の取締役が就任するまでの間、
取締役としての権利義務を免れることができません
(会社法346条1項)。
したがって、取締役の人数を事前に確認しておくことが必要です。
③ 損害賠償責任を追及される可能性
取締役は理由なくいつでも辞任できますが、
やむを得ない事由がない場合には、
会社にとって不利な時期に辞任したときに、
取締役は会社に対して発生した損害を賠償しなければならなくなる
可能性があります(民法651条2項)。
具体的にどのような事情があるときに「不利な時期」といえるかは、
個別の事案によって異なりますのでご相談ください。
なお、取締役を辞任した際は、
辞任登記をする必要がありますのでご注意ください。