就業規則の退職予告期間の拘束について
Q.
現在の職場に不満はありませんが、退職したいと思っています。
就業規則には、退職しようとするときは、「退職しようとする日の30日以上前に申入れをしなくてはならない」と規定されています。
規定どおり30日の予告期間が必要ですか?
なお、私は雇用契約に期間の定めがない正社員です。
A.
就業規則の3日以上の退職予告期間には拘束されず、法律上は
直ちに退職の申入れをすることができます。
ただし、退職の申入れをした日から原則として2週間の経過によっ
て雇用契約は終了することとなります。
もちろん、退職代行を利用して弁護士に依頼することもできます。
【解説】
法律上、雇用契約に期間の定めがない場合、労働者はいつでも退職の申入れができ、この申入れから2週間後に雇用契約は終了することとされています(民法627条1項)。
ところで、民法の規定の多くは任意規定といって、契約当事者によりその規定とは異なる合意を有効にすることができます。
そこで、使用者においては、労働者が退職する際の事務引継期間の必要性等を理由に、就業規則や契約で前記法律で規定されている予告期間2週間をこれよりも長く、例えば本件のように30日以上と規定することが多く見受けられます。
しかしながら、民法の規定する予告期間2週間の定めは、労働者の退職の自由(憲法22条1項)を保障する観点から、使用者が一方的に延長することはできない強行規定(当事者の合意によっても、これに反することのできない規定)であるとして、就業規則や契約による予告期間の延長は無効であるものと解されています(東京地判 S51.10.29)。
したがって、本件の30日以上の予告期間を定める就業規則の定めは、民法627条1項に違反し無効ですので、30日以上の予告期間には拘束されず、直ちに退職の申入れをすることができます。
ただし、法律上は、退職の申入れをした日から2週間経過して雇用契約は終了することになります。