パワハラにより退職する場合の救済策
Q.
職場の上司からのパワーハラスメントが原因でうつ病を発症し、
入院を経て自宅療養中です。
職場復帰は考えられず退職を考えています。
退職可能でしょうか?
また、退職した場合、法的にどのようなことができますか?
A.
直ちに退職することができます。
また、業務上災害として労災保険から労災給付を受けることができるとともに、上司及び会社に対して、損害賠償請求をすることができます。
退職後は、継続して労災給付を受けるか、会社都合退職として
雇用保険から失業給付を受けることもできます。
もちろん、退職代行を利用して弁護士に依頼することもできます。
【解説】
パワハラとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上、必要かつ相当な範囲を超えるものとされています。
例えば、暴言、暴力、執拗な非難、仕事外し、無視、仕事を与えない、仕事以外の事柄の強要などがパワハラに当たります。
企業は、パワハラについて、その防止策を講じるよう義務を負っています(パワハラ防止法)。
まず、退職についてですが、職場の上司からパワハラ被害に遭って、うつ病を発症して就労不能状態になったということですので、雇用契約に期間の定めがあるかどうかを問わず、法的に「やむを得ない事由」があるものとして直ちに退職することができます。(民法628条、なお、同条は雇用契約に期間の定めのない雇用契約にも適用があるものと解されています(大判T11.5.29)。)
「やむを得ない事由」とは、雇用契約が継続することが社会通念上、不当、不公正と認められる場合をいい、労働者が疾病(うつ病)により就労不能となったような本件は当然、これに含まれます。
次に、うつ病が職場の上司によるパワハラが原因で発症したものであれば、パワハラと疾病との間に業務上の起因性が認められ、労災認定を経て労災給付を受けることができます。
労災給付の内容は療養補償(治療費含む)及び休業補償ですが、休業損害については満額が補償されるわけではなく、平均賃金の8割となっています。また、慰謝料は給付の対象となっていません。
そこで、労災では補填できなかった損害、すなわち、休業損害の残額及び慰謝料等について直接の加害者たる上司に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
また、会社には労働者に対して、職場環境を良好に保つ義務ないしは安全配慮義務がありますので、本件ではこの義務違反があったものとして、使用者たる会社に対しても連帯して損害賠償請求をすることができます。
退職後は、労災給付を継続して受けることもできますし、再就職するまでの間、雇用保険から会社都合退職として失業給付を受けることができます。失業給付の詳細については、最寄りのハローワークにお尋ねください。